「黒ワニとハーモニカ」別館 バンダイがマーズジャケットをプラモにしてくれるのを待つ日記

ロボットアニメをわりと好むヲタによるブログ。 たまに少しだけ防衛問題について喋ったりもします。 あとパワードレッド・ドレッドノートHのプラモ化と、コトブキヤが有澤の雷電をプラモにしてくれるのも待ってます。

「沖縄現代史 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで」櫻澤 誠

一部在沖メディアや学者に見られる、本土のそれをさらに煮詰めたような反軍・反米的記述に辟易するものはあったが、(付け加えるなら、恥ずかしながら評者がその筋と翁長現沖縄県知事を始めとする歴代県知事らの意見が違うことを把握できたのもそれほど昔ではない)、具体的にはどうなのか?ということを知る機会がなかなかなく、そんなところでこの本を知り、ざっと見て信頼できそうな著者だということで購入。
非常に得るところが多い良著だった。
まず沖縄における保革対立というのは明確に二つに分けられるほど単純でもなければ、片方が勝ってももう片方を大差で破ったというケースが多いわけでもなく、沖縄県民の民意なるものを安易に読み取ろうとすると著者が後書きで書いているようにとんでもない方向に向かう。

また日米安保・自衛隊をめぐって県民が示しているのはこれ以上の負担増大への拒絶と基地漸減であって、日米両軍の全基地即時撤去や日米安保条約そのものの破棄といった極端な主張ではない。(翁長知事の公式ホームページにおける政策リストでもその旨が記されている)
むしろそれらの存在自体はやむを得ない、必要とみなされている。
また基地がなければ経済的に立ち行かないという見方も事実に即していないというのは非常に興味深い点だった。

沖縄戦への県民の理解については、評者は完全に杜撰な見方をしていたと言わざるを得ない。
「第二次大戦で戦死者10万人なら他にいくらでもある規模だろう」くらいの認識でいたのだが、40年の沖縄総人口57万4579人に対して(沖縄県民の)戦死者12万2228人と書かれると、あれほど沖縄戦をめぐって敏感に反応する意味も分かる。

ただ、普天間移設については評者はやはり辺野古しかないのではないかと考えており、それについては前と変わらない見解である。今から県外移転といっても受け入れ先を探す政治的な時間も余力も薄い上、現在の情勢で在沖米軍兵力を減らすというのはアチソンラインの二の舞いになるのではないかと考える。
ただそれならそれで相応に地元に十分な説明と折衝を重ねるべきで、現在の第二次安倍政権の手法はまったく支持できない。
ただでさえ沖縄が飲みにくい辺野古移設を受け入れさせるなら相応の対価を用意すべきで、具体的に言えば日米地位協定の(「運用見直し」ではなく)協定改定、特に沖縄にとって大きな不満である犯罪米兵・軍属・その家族他の裁判権を日本側に取り戻すくらいの抜本的で大胆なことをする必要があるのではないか。
もっとも、犯罪米兵その他の裁判権を日本側に戻すというのは「日本の刑事司法制度は被告の権利を十分に守っている」という点で米側と合意できないと達成できない難題で、その司法制度改革がはっきり言って完全に行き詰まっているのでそれも難しいのは事実ではあるのだが…。

以下脱線。
ドイツではそれを合意できたので52年の旧ボン補足協定を改定して98年の改定補足協定で駐留米兵その他への刑法適用除外規定を削除するなどの法改正ができた…というのはよく引用されるのだが、これが微妙なところで、そもそもボン補足協定、つまり米独地位協定は被占領国に対する占領国の特権として始まった法規である。対して、日米安保条約は少なくとも建前の上では独立国同士の相互条約である。
旧ボン補足協定の改定は冷戦終結でもはや占領国としての法的特権を維持する正統性が失われたというのも理由の一つだ。
またドイツが冷戦後地位協定を改定できたのは冷戦の間ワルシャワ条約機構軍の最前線に立たされるNATOの前線として積極的に防衛負担を引き受けてきたことや、冷戦終結後のNATO域外派兵意見問題で混乱するドイツ国内政治への援護射撃という側面もあり、また日本の国内法は軍事的必要性をまったく無視して作られており(実質上の)自国軍たる自衛隊の運用でさえ支障が多く、武力攻撃事態対処関連3法案で延々と適用除外規定を作り続けなければならなかったことを考えると、「米軍への国内法適用/適用除外規定廃止」は一体どうやるのかという疑問もあるので単純には比較はできない。
ただ、率直に言えばやはりもどかしいものは否めない。

非常に示唆に富む良書。
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