「黒ワニとハーモニカ」別館 バンダイがマーズジャケットをプラモにしてくれるのを待つ日記

ロボットアニメをわりと好むヲタによるブログ。 たまに少しだけ防衛問題について喋ったりもします。 あとパワードレッド・ドレッドノートHのプラモ化と、コトブキヤが有澤の雷電をプラモにしてくれるのも待ってます。

「機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画」Ark-Performance

宇宙世紀で後世になって描かれたドキュメンタリーという体裁での1st裏話的ガンダム漫画。
帯ではサスペンスとなっていますが、個人的な印象としては「ワルキューレ作戦」を下敷きにした政治劇といった感。

既存公式作品からのネタ拾いがとにかく上手い。
「サハリン家はオペラのボックス席を失ったよ」という台詞がありますがこの物語が描かれている12月時点ではすでに08小隊完結済みで、ギニアス戦死&アイナはシローと逃げているのでサハリン家は没落済み。
また同じシーンの中でラル家も長男の戦死で直系が途絶え傍流が後を継いだ旨が述べられていますが、このシーンのドズル評「彼に悪意はない。悪意はないまま人を不幸にする」というのは彼に直接間接関わったハマーンやミネバの後の運命を考えると「剛毅な武人」としてお手軽ないい人キャラ(オリジンではブリティッシュ作戦が終わった後自責に取り憑かれて号泣するシーンもありましたが)扱いされてきた中でそれとは違う見方をしていますが、結構的を得た評価ではないかと。

この他にグレミー=ギレンの落胤説に劇中で触れたり(俺が知るかぎりでは設定解説でそう述べている資料は多くありますが、劇中でそれに触れたのは初めてのはず)、サイクロプス隊がちらっと出てきたりとネタのつぎはぎが上手い。
特に見事な使い方をしたと思ったのが0080で描かれたキリングの暴走。
0080製作当時は単にバーニィを追い込むための舞台装置以上の意味はなかったものをギレン派とキシリア派の政治暗闘というテーマに効果的に再利用している。

中でも感心を通り越して唖然としたのは最初にギレンの暗殺計画をやって逮捕された面々、最初はこの作品のオリジナルかと思ってたんですが、実は「MS ERA」で出ていた面子という。
脅威のネタ拾い力。

またArkのガンダム漫画お得意の「架空世界の掘り下げ」もこの漫画でもバッチリ拘っていて、「コロニーの擬似重力下では狙撃は地球上とは違う弾道を飛ぶ」という物理の話もありますが、特に興味深かったのが「官公庁の集まりであるズムシティでは定時がすぎれば人がいなくなり明かりが消える→これは戦意高揚の観点からいってまずいので、人がいなくても明かりだけはつけておく」という通常の灯火管制とは逆の「灯火管制」を行っているという話。またザビ家独裁という政治体制の中にあるジオン議会の虚実も面白いところ。
ミリタリー描写も「作劇におけるリアリティ」「その作品世界の中におけるリアリティ」を追求していて好感が持てるし面白い。
架空世界に現実の法則をそのまま持ち込むだけの山根や押井的な「リアル」ではなく、「ミノフスキー粒子があり、MSが戦場の主役になっているというガンダム世界における『現実的な描写』とは何か」をちゃんと考えた「リアリティ」がある。説得力と呼ぶほうが誤解を招かないかしら。

地味な政治劇とサスペンスが続く中で最終巻、ついに決起する首都防衛大隊と親衛隊の戦い、わけでもグフカスvsガルバルディは非常に迫力あるバトル。
思わずグフカスもう1個買って白く塗っちゃいましたよ。ヒートサーベル二刀流で。

そしてこういう作品に似つかわない、主人公をお兄ちゃんと呼ぶ幼なじみなエリースも実はこの作品に出るだけの策士だったという。
レオの前ではダダ甘なのにいないとこではころっと表情を変えて、いかにもギレンの部下(正確には部下の部下だけど)らしい怜悧な官僚の顔になるのが怖い。

全体的に「負けが混んでるファシズム体制国家の息苦しさ」というものもあり、ガンダム漫画としては抜群に面白い作品だと思います。(ある程度のガンダム知識がないと十二分には楽しめないですが……)


……買った時に感想書いたつもりでいたんですが、検索で出てこなくて焦って調べたら下書きだけして忘れてたという。Ark先生ごめんなさい。
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