「黒ワニとハーモニカ」別館 バンダイがマーズジャケットをプラモにしてくれるのを待つ日記

ロボットアニメをわりと好むヲタによるブログ。 たまに少しだけ防衛問題について喋ったりもします。 あとパワードレッド・ドレッドノートHのプラモ化と、コトブキヤが有澤の雷電をプラモにしてくれるのも待ってます。

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吉田岩窟王事件・雑感

とりあえず関連書籍を何冊か読んで、感情的に思ったことをつらつらと。

半世紀もの間、何度拷問を受けようが再審を却下されようが決して諦めなかった不屈の精神はやはりすごいが、吉田老人を見ていて自分がすごいなと思ったのは行動力である。
刑務所から出た後東京に来て最初に行ったのが新聞社に行って「強盗殺人で22年服役してきたがわしは無実や」。
新聞社もこの手のタレコミだか陳情だかはよくあるので1日目は適当に扱って追い返すんだけど、吉田老人は翌日また来る。
そして「とにかく話だけでも聞いておけ」となり、実際に彼の話を聞いてみると「どうやら本物ではないか?真実冤罪ではないか?」となり、雪冤の戦いが始まっていく。

しかし行動力も凄いが、ここで「この老人は真実冤罪ではないか」と思わせるのが吉田老人の真に凄いところだと思う。
その後寄食していた弟の家を出て仕事を始めた時も「あんたのような人が強盗殺人なんて恐ろしいことをやったとは私は信じぬ」と近所の古物商仲間に慕われる老婆に見込まれ、彼女は古物商の許可証が吉田老人に下りるよう陳情に通い、商売を教え、300人からのお得意様をみんな吉田老人に譲ってくれた。
出所した時すでに55歳だったが、これまた「吉田のおじいさんのような人が強盗殺人なんてするわけない」と古物商をやるうちに知り合った女性と結婚もした。
古物商仕事ではやはり「あのじじいは強盗殺人の前科者だ」と言いふらす同業者がいて苦労もあったが、客は吉田夫婦を信用し、わざわざ夫婦が買取に来るのを待って売らずにいてくれる。
そのうちに吉田老人、古物商仲間と相談して集めた金物をお国に奉納し(時ちょうど太平洋戦争の頃である)、陸軍大臣から感状をもらったりもしている。

やがて老人の話を信用して協力を申し出た前述の新聞記者達が、真犯人である海田庄太郎と北川芳平を探し当ててくれる。
吉田老人の顔を見るなり脱兎のごとく逃げ出した挙句、結局土下座し詫び状まで書いたという海田との対面のシーンはきわめて印象的である。
(だが海田は後に「詫び状は吉田の暴力が怖くて書かされた」「検事の言うことに従っていたらなんか吉田が主犯ってことになってた」とこの時真実を言う、と約束したにも関わらずその約束を無碍にする)

そして戦争で家が焼け、栃木に疎開する吉田夫妻。
再審裁判でも言われているが、そこでは吉田老人が前科者であることなど誰も知らず、黙っていればそのまま誰も知らなかったが、吉田老人は「わしは強盗殺人の罪で前科を背負わされておるが無実や」と会う人会う人に言ううちにその話を知らない人間が村中からいなくなるほど、やはり雪冤への意思は固かった。
それを聞いた疎開先の村では「わが村でそのような苦しみを受けている人がいるとは放ってはおけぬ」と村長たちが署名に立ち上がる。


凄いなと思うのは、要所要所で会う人がみんな「この人が言っていることは本当だ、この人が強盗殺人などするはずない」と思うことである。
これは幸運などという話で片付けるには吉田老人にあまりに無礼であろう。
それだけ吉田老人が真面目に、正直に生きてきた何よりの証しなのだと思う。
その結果、吉田老人は妻もおり、義理だが娘もいて、その娘も結婚し子供を産んで孫にも恵まれた。

ガラス工時代の雇い主も「石松は男でありながら女のような気質で、真面目で腕もよく、暴力を振るったり身持ちの悪かったようなことは決してなかった」と裁判で証言し、再審裁判ではすでに病床の身だったが吉田老人に「おれはあんたが逮捕された時からあんたがあんな犯罪を犯すはずがないと信じておった、どうかおれが生きている内に無罪になってくれ」とも言っている。
秋田刑務所では所長に「君は真実冤罪のようだが、ここは刑務所で刑を執行するところなのだから無罪を訴えられてもどうしてやることもできぬ。それより本当に雪冤を晴らしたいなら一刻も早くここを出ることだ。あらゆる懲罰を受けた君には本来認められないのだが、どうだ、僕の気持ちに答えてこれからは真面目にやってみないか」と声をかけられ、感激した吉田老人はそれまで罪を認めないがゆえに刑務につくことも拒否してきたのが一転真面目に務めるようになり、やがて改悛の情を示していない殺人犯であるにも関わらず仮出所を勝ち取る(この際出所前日に所長に呼び出され「長年苦労したと思う。出所後はぜひとも雪冤を晴らせよ」と訓示を受けている)。

そして見事無罪判決を勝ち取る吉田老人。
それをみんなが祝う。杖がないとうまく歩けない吉田老人には家に入るのも難しいほどの客が来る。近所の衆も親戚衆もどっと押し寄せ、家の前の田んぼ道が延々客で連なる。
村で祝賀会が開かれる。
日に50通、60通も日本中から吉田老人を励まし、いたわり、同情し、無罪判決を祝ってくれるはがきや手紙が届く。
足が悪くなり寝たきりになり、「故郷に一度帰って先祖や母の墓に詣でたいがそれもできない」と嘆く吉田老人の話を聞いて、故郷の風景をフィルムに収め、それを栃木の吉田老人の家で見せてくれる有志が現れる。
吉田老人を招待する熱海の温泉宿も現れる。

対して海田の晩年はどうか。
元々私生児で身寄りもなかったが、その後も結局家族を作ることもなく、財産もなく(上述の海田と吉田老人の対面の時も、海田の家は戸もない一畳4間の、ござと七輪があるだけの掘っ立て小屋だった)、施設で看護婦に相手をしてもらうだけの日々。

フィクションではないか、できすぎではないかと思うほどの絵に描いたような因果応報である。
自分は非常にこの一連の話を読んでいて感銘を受けた。
真面目に生きるとはこういうことか、嘘ばかりついて生きていくとこうなるのか……と言うのだろうか。そういう言葉に変えてしまうと急に陳腐になってしまうが、ともあれ読んでいてそんな思いだった。
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国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議

その第一回の配布資料、日本の国立公文書館の現状を説明した資料の中から。

http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/kentou/20140516/siryou3-4.pdf

各国国立公文書館の規模比較早見表。
一応私は瀬畑氏の本でほぼ同じものを以前見たことがあったが、何度見ても暗澹たる気分にさせられる。
英米に情報公開で劣るのはもうしょうがないと諦めるにしても、20世紀にもなって軍政が敷かれていた国で、しかも未だに儒教的血縁主義の弊害が深刻と言われ、F-15Eを導入してもタキシング中にマンホールに引っかかって壊すような国にも劣る(それも人員数・床面積ともに1/10というレベル)というのは恥ずかしいの一言に尽きるというか、情報公開制度の恐るべき貧弱さと、未だに警察の取り調べ全面可視化&弁護士立会いのめども立たない司法取調制度の前近代ぶりを見ていると「中世ジャップランド」というネットスラングもなんの根拠なく、実態とは関係のないところから生まれた言葉(例えば「戦争利権による軍需産業の陰謀」の類のもの)とは思えなくなる。

「終戦のエンペラー」

たれ氏の推薦を見て公式サイトのティザームービーを見るなどして結構面白そうだったので見に行きました。

「昭和天皇が開戦にどれくらい関わっていたのか、それは分からない。今後2000年かけて調べても謎だろう。
ただ彼の意思が終戦を導いたのは間違いない」

こういう昭和史の繊細で曖昧模糊とした部分をハリウッドの映画がきっちり再現してくるとは思っていませんでした正直。侮ってた。
マッカーサーに昭和天皇無罪の書類を出して「証拠がないとはどういうことだ」と詰問されて「そうとしか言いようが無い」と答えるくだりとか。

てかハリウッドなら昭和天皇をひとりのキャラクターとして創作に出せるのね。日本じゃ絶対無理っしょ。
日本側要人の回想シーンでは声しか映らないアングルだった昭和天皇が、マッカーサーとの会談シーンになって初めて顔を含めた全身が正面から映るカットになったのも印象的。

あと個人的にポイント高かったのはGHQの日本通を指す字幕が「親日派」ではなくきちんと「知日派」になってた点。

2時間、明確な盛り上がりどころもなく淡々と続く映画ですが、この時代に興味がある人なら見て損しないと思います。

読書メモ「スターリンからプレジネフまで」その2

スターリン主義の粛清とはいかなる動機によるものか、あるいは彼の安全保障観について。

「……人間よりもむしろ韜晦で処理するというやり方である。何らかの反対派と過去に何らかの関係があったかどうか。党の路線からはずれら何らかの発言の記録があるかどうか。隣人から好ましくないことが報告されていないかどうか。外国からの訪問者はなかったか。外国で勤務することによって外国の手先かトロツキストと会う機会をもたなかったか。上述のいずれかの者の同僚あるいは部下ではなかったか。大々的な流血が進展していたときにそれが賢明なことえはないというような疑いを述べなかったか。ひょっとして誰かすでに網にかかった者の息子か妻か父ではないか。もしそうなら用心するに越したことはない。留置し、移送し、孤立させよ」

これだけ猜疑心の虜になっていたら粛清の範囲があれほどの広範囲にわたるのも納得せざるを得ない。

閑話休題。
ニコ動で怪気炎をあげていた反民主・反小沢派がまさにまったくこれと同じように「外国で勤務したことがあるやつはスパイ容疑者だ」と言っていたのを思い出して寒気がした。

読書メモ「スターリンからプレジネフまで」

なぜソ連型共産主義は一党独裁・官僚専制主義になるのか。

・農民が戦術的において現存秩序への転覆に重要な役割を果たしうると考えていた上、気質的に条件が熟するのを待つことを好まず性急な革命を望んだ結果として、少数者の党による長期の支配が帰結として生まれ、それはつまり「上からの革命」である。党はやがてプロレタリアートに取って代わり、やがては独裁者が党に取って代わる。つまり官僚的専制主義の危険は革命の最初期の時点ですでに内包されていた。

・農民の圧倒的に優勢な国における自然発生的な政治的・社会的勢力は、社会主義に敵対する意向を表すであろうことをレーニンは承知していたからこそ少数のポリシェヴィキによる一党独裁国家、定期的粛清によるイデオロギー的純潔の保持が必要になるという論理が登場した。

つまり「党が国家の全領域を指導する」というソ連型共産主義の大前提がまさに「少数派が権力を手にするにはどうするか」という問題への回答。
チェコの「2千語宣言」が戦車で粉砕されたのはその「全領域にわたる指導」が放棄されそうになったからで、それはつまり共産党の権力基盤そのものを脅かすことになる。
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